「勘違い」で部下が成長する

「勘違い」で部下が成長する

「来月で辞めさせてください」

その言葉を聞いて、やはりその話かと思った。

パートの鈴木さんが私の所に来た時の雰囲気で、

重要な話をされることを薄々感じていた。

悪い予感が当たってしまったのだ。

「不安」が部下を退職に追いやる

鈴木さんは、

この仕事が合わないんじゃないかとずっと悩んでいた。

私は何度も鈴木さんの相談に乗っていたし、

私を含めてスタッフ全員でフォローもしていた。

みんなでフォローに入るようになってから、

鈴木さんの働き方は大分変り、

ミスも少なくなってきていた。

それなので、このまま仕事を続けてくれるのではと、

私は勝手に考えていた。

でも、私の考えは甘かった。

「もう少し、一緒に仕事をしてくれませんか?」

私としては、

出来れば彼女に仕事を続けて欲しいと思っていた。

だから、なんとか鈴木さんを引き留めようとした。

でも彼女は、決して首を縦に振らなかった。

ここまで頑張って働いてくれた鈴木さんを、

これ以上苦しめることは出来ない。

残念ではあるが、

彼女の退職を受け入れることにした。

翌日、職場に来ると、

鈴木さんの雰囲気が前日までの雰囲気と

全く違うことに気がついた。

初めは何が違うのかは、

ハッキリと分からなかった。

しばらく鈴木さんをみていると、

その違いに気がついた。

それは「笑顔」だった。

前日までの鈴木さんは、

なんとなく元気がない笑顔だった。

失敗を恐れていた鈴木さんは、

その不安な気持ちが笑顔に出ていたのだろう。

それに対して、今日の鈴木さんは、

とても素敵な笑顔をしていた。

辞めることが決まり、

肩の荷が下りたのだろう。

これが鈴木さんの本来の笑顔なのだろうと思った。

鈴木さんの本来の笑顔を見たときに、

1日でこんなにも変わるんだと驚いた。

それと同時に、

それだけ不安な状態で仕事をさせていたことに、

上司として申し訳ない思いでいっぱいになった。

鈴木さんの事を考えている時に、

昔の上司の事を思い出した。

元上司から学んだ人材育成法

この上司は、とにかく明るくて、

物事をポジティブに考える人だった。

それなので、部下からは慕われていたし、

職場の雰囲気もとても良かった。

ある時、仕事のことで悩んでいた私は、

上司に相談にいった。

「諏訪さん、凄いじゃん!

その部分が出来ていないって分かったんだね!

それだけで大きな進歩だよ!OK、OK!」

上司の言葉を聞いて、一瞬戸惑った。

私が全く予想していない答えが返ってきたからだ。

上司の言葉に、

私の頭は反応出来ていなかった。

それはそうだ、

仕事が上手くいっていないのは、

私の能力が不足していると考えていた。

だから、仕事の進め方や考え方の間違いを

指摘されて当然だと思っていた。

でも、私の上司は、

私の仕事の進め方や考え方を

決して否定しなかった。

それどころか、褒めてくれたのだ。

人は、余りにも予想外なことが起きると、

パニックになる。

まさに、そんな状態だったのだろう。

「あれ、褒められている?」

しかし、すぐに暖かい気持ちが、

身体全体に広がっていった。

頭はパニック状態だが、

感覚が褒められたことを感じる。

「ちゃんと仕事は進んでいたんだ!」

それから少し時間が経ち、

上司が言ったことを頭で理解できるようになった。

この間、10秒から20秒ぐらいの出来事だ。

しかし、この10秒から20秒で、

私の仕事への不安は、

物事が進んでいるという自信へと変わっていった。

「勘違い」で部下が成長する

私は、このことを「良い勘違い」と呼んでいる。

同じ出来事が起こっても、

それを不安に感じる人もいれば、

自信に変えることが出来る人もいる。

不安と自信のどちらも選択できるとしたら、

自分の部下には、

不安でなくて自信を選択して欲しいと思っている。

でも、人は誰でも、

自分の事は分からないものだ。

分からないからそこ、不安を感じてしまう。

だからこそ、上司の存在が必要なのだ。

上司が客観的に物事をみて、

出来ていることを探しあげるのだ。

どんなに小さなことでも、

どんなに些細な事ことでもいい。

必ず出来ていることはある。

それを探すことが上司の仕事だ。

上司が見つけた、

小さなこと、些細なことで、

部下は「良い勘違い」をする。

その「良い勘違い」のおかげで、

部下は物事を前向きに捉えることが出来るようになる。

「良い勘違い」は、

大きなものを探す必要はない。

なぜなら、初めは小さなものでも、

それが積み重なれば山となるからだ。

山となる頃には、

部下は自信に満ち溢れて仕事を楽しんでいることだろう。

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